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第6回 「タイヤ編(4) 〜一発タイムを出すときのタイヤの暖め方(後編)〜 <2004年6月1日>

前回のコラム、いかがでしたか?
ポイントは、タイヤグリップのピークを4輪で合わせるようなタイヤの
暖め方をすることなのですが、今回はサーキットを筑波2000、クルマはFFのシビック、タイヤはSタイヤの新品と仮定してより実践的なお話しをしましょう。(かなりマニアックな話ですが・・・・・)


たとえば、今までのデータから空気圧は、温間時に2.0kg/cm2がベストで、冷間時に1.6kg/cm2に合わせて、ちょうど
暖まると、2.0kg/cm2になるとしましょう。
田中だったら、まず、何ラップ目でベストを出すかを決めます。(
ここがポイント!!!
たとえばタイヤが、2ラップで
暖まるとして、3〜4ラップ目なのか、それとも、5〜6ラップ目なのか。
ここは
まさに戦略です。
なぜかというと、ここで冷間時の空気圧を決定するからです。(そのために、普段から延々と走りつづけて、その中でたまたまタイムが出るというのではなく、狙ったラップにタイムを出せるようにトレーニングしておくことも重要です。)

仮に、3〜4ラップ目に狙うのであれば、冷間時の空気圧は1.6kg/cm2ではなく、1.7〜1.8kg/cm2ぐらいの高めに設定します。そして、5〜6ラップ目に狙うなら、通常どおり1.6kg/cm2に設定します。
この場合のチョイスは、アタック前にセッティングを大きく変えて確認が必要だったたり、攻めるとどうしても上手くまとまらないような場合は、後者(1.6kg/cm2)を選びますが、一発狙いの時は、間違いなく前者(1.7〜1.8kg/cm2)をチョイスします。

もちろんタイヤ単体で考えれば、
暖まった直後の3ラップ目が一番おいしいけれど、引っかかり(スローペースなクルマにね)やシフトミスなど、1回のミスでNEWタイヤでのアタックが失敗するリスクはあります。
なぜなら、高めの空気圧で3〜4ラップ目をミスったら、5ラップ目以降は、温間での空気圧が2.2kg/cm2以上になりタイムアップは100%期待できないからです。

反対に、5〜6ラップ目に狙うために、冷間1.6kg/cm2に合わせると、タイヤは暖まっている3ラップ目でも、空気圧は、1.8kg/cm2ぐらいにしか上がっておらず、グリップはベストとは言えません。その後、5〜6ラップ目あたりに、適正空気圧になるものの、タイヤのグリップ力は3ラップ目に比べると多少落ちてしまいます。
どうです? 空気圧のマジック、解ってもらえましたか?


それじゃ、次はタイヤの暖め方
タイヤを暖めるというと、F1レースのフォーメーションラップのようにジグザグに走ってる人をたまに見かけますが、あれはNG。そもそもタイヤは、コンパウンド表面と路面との摩擦だけで温度が上がるのではないからです。
???と頭の中がなった人もいると思いますが、じつは、走行中のタイヤ構造(コンパウンドの中の硬いゴムのこと)のヨレやタワミによりタイヤ内部で発生する熱の方が大きく、確実に暖まるのです。
効果的にタイヤを暖めるには、トラクション(ブレーキもね)がなんといっても一番なんです!
だから、駆動輪は比較的簡単に温度を上げることができ、駆動輪じゃない方のタイヤは、暖まりにくいということになりますね。今回の題材のFFシビックの場合は、前タイヤは暖まりやすいけれど、後タイヤは温まりにくいということになります。(わかるかな?)


筑波2000の場合、右コーナーが多いので、一番早く暖まるのは左フロント。
このタイヤは、アタック中も一番早くピークを迎え、一番早くグリップダウンしていくので、暖めるのは最後の最後。
反対に、一番暖まりにくいのは右リア(FRなら右フロント)。
この、右リアを暖めるのは第一ヘアピンが効果的なので、田中ならタイヤを暖めるためにまずここは攻めます。
そして、右リアが暖まってきたな〜っと感じたら、徐々にペースアップして全体を均等に暖めます。
感覚的に、右コーナーは60%ぐらいで走り、左コーナーは80〜90%で走ります。

最終コーナーのように、“G”が長く続くようなコーナーや、右コーナー出口のトラクションは最後まで攻めず、とにかく、4輪のタイヤ温度が均等に上がるように、タイヤを暖めます。この時、もちろんアタック中に引っかからないように前後の間隔も考えながら調整します。
そして、そして、アタックラップのコントロールラインでキッチリ4輪のタイヤが90%近く暖まっていれば、後は集中してミスなく走るだけで、いともカンタンに一発のタイムは出るのです。本当です。


要するに、各々のタイヤグリップがピークに来る寸前の状態でアタックが始まるようにタイヤを暖められれば、4輪のタイヤがMAXのグリップを発揮しているタイミングがそろっている時間が長く、この時にベストタイム出るということです。

また、これはタイヤの空気圧も同じことで、アタックが始まる時に4輪とも狙った空気圧になるようにタイヤを暖めるのですが、裏技として、コースレイアウトにより暖まりにくいタイヤは、冷間時の空気圧を他のタイヤよりほんの少し(0.1kg/cm3ぐらい)上げておくといいですよ。

次回は、レーシングカーのタイヤテストのお話です。

次回は、6月15日予定です。
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