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第9回 「荷重編(2) 〜加速時の荷重移動〜 <2004年8月17日>

加速時の荷重変化
さて、前回はブレーキング時の荷重変化についてお話しましたが、今回は、その逆に当たる「加速」するときの荷重変化について説明したいと思います。
 

荷重の移動について
スタート発進やコーナーからの脱出でアクセルを踏むと、車の荷重はリアへと移動するのは、皆さんご存知ですよね! リアへ移動するということは、リアタイヤに荷重が掛かり、フロントタイヤの荷重は抜けていくということです。


要するに、荷重が掛かるリアタイヤはどんどんグリップが大きくなり、荷重が抜けてゆくフロントタイヤのグリップはどんどん小さくなります。
【加速荷重の公式】 

荷重がリアに移動する = リアタイヤがグリップする = フロントタイヤがグリップしなくなる


駆動方式
FRやミドシップ、RRの場合だと、加速し出すと、リアタイヤのグリップが上がりますから、これを有効に使うとトラクションには大きなアドバンテージとなります。反対にFFの場合は、加速するにつれて駆動輪であるフロントタイヤの荷重は抜けていきますので、トラクション的には厳しくなります。

FFってフロントヘビー?
余談ですが、FFの重量バランスは、”フロントヘビー”って言われていますよね?
でも、FFの場合は、”フロントヘビー”で無ければならないのです。なぜなら、加速するときに多少荷重がリアよりになってもトラクション確保のためにしっかりと荷重(重さ)を残しておけるように、初めから”フロントヘビー”に作っておかないと、まったくトラクションの効かないクルマになってしまうからです。だからミッドシップ(フロントミッドシップを除く)や、リアエンジン車のFFは存在しないのです。

荷重の掛け方(FR・MR・RR)
話を戻して、では、どのような荷重の掛け方(アクセルの踏み方)がドラテク的に「OK」なのかを説明します。
まずは、FRやミッドシップ、RRの場合から説明しましょう。
リア駆動のクルマは、トラクション時にリアのグリップが必要不可欠です。
しかし、好都合にもアクセルを踏む事により荷重によるグリップが「リア」に発生します。
また、荷重のグリップは加速状態が強い程、大きくなります。
そして、荷重のグリップを使って速く走るポイントとなるのが、荷重の移動スピードなのです。

荷重の移動は、ブレーキング時と同様、アクセルを踏んだらすぐに発生するわけではありません。
アクセルを踏んでも、荷重が移動するには時間が必要です。
もちろん、この荷重の移動は、エンジンパワーや、スロットルレスポンスにも影響されます。
要するに、フロント荷重の時や、フロントとリアの荷重が均一に掛かっているときに”ガバッ”とアクセルを踏むと荷重が移る前にトラクションが掛かってしまい、一気にグリップを失いオーバーステアやスピンとなってしまうのです。

では、どのようにすれば良いのか?
答えは、荷重が移動するのを待つのです。

具体的に説明すると、例えば、ヘアピンコーナーから立ち上がるとしましょう。
その時のアクセルの踏み方は、エンジン特性にもよりますが、おおよそ50%くらいアクセルを踏み込み、トラクションがかかるのを一瞬ですが待つのです。(アクセルキープのまま)そして、トラクションがかかりだしたら、そのまま残りを踏み込みます。時間にして1〜1.5秒くらいでしょうか。

最初の50%は、リアに荷重をかけるためのアクセルで、荷重がかかりだしてから、本格的に加速すると効率よく荷重のグリップが使えるという仕組みになっています。

また、アクセルを踏み込んでから、パワーが駆動輪にかかるまでには"ラグ"が発生します。
そのためにも"待つ”ことが重要なのです。
問題なのは、アクセルの開度なのでは無く、その時、駆動輪にどれだけのパワーが掛かっているかを感じ取ることで、この駆動力の大きさによって、荷重移動のスピードが決まるということなんです。

荷重の掛け方(FF)
駆動輪であるフロントにパワーが伝わるにつれて、フロントの荷重が抜けますので、急激にフロント荷重が抜けるようなアクセルワークは厳禁です。
特にレーシングスタートの時は、急激にトラクションを掛け、一気にリアに荷重を移してしまうと、簡単にホイールスピンが始まり、アクセルコントロールをしてもなかなかトラクションが復活しないので、シビアなアクセルワークが必要です。
また、コーナー出口では、ハンドルをたくさん切っている状態で、急激にアクセルを踏んで前輪の荷重を抜いてしまうと、アンダーステアが強くなってしまうので、出来るだけハンドルを戻しながら加速する(アクセルを踏む)ことがポイントです。


具体的には・・・

ヘアピンコーナーからの立ち上がりで説明すると、ハンドルをたくさん切っている状態では、少しだけアクセルを踏み、体勢をキープする。(アクセルを踏む量は、フロントタイヤのグリップレベルに応じて決まります。)
そして、ハンドルを戻すに従って、どんどんアクセルを踏み込んで行く、ということが正しい荷重グリップの使用方法です。
(縦のグリップ+横のグリップ = タイヤのグリップ性能)

ターボカーより、NAのほうがコーナーリングマシンと言われているのは、どの回転域でもアクセルを踏んだときのパワー差が少ない(フラットトルクな)NAに対して、ターボカーのアクセルは、回転数やブーストの効き具合によって駆動輪に伝わるパワーが大きく異なり、アクセルコントロールによる荷重操作がやりにくいからなのです。
いくらエンジンパワーがあっても、ピーキーな特性ではサーキットを速くは走れないといわれているのは、これらの要因からです。


次回は、荷重編(3)「コーナーリング」です。

次回は、9月18日予定です。
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