TOP > 田中ミノルの勝手にドラテク講座! > 第16回
   
第16回 「荷重編D」 <レーシングカーの荷重によるセットアップ その1> <2005年03月11日>

前回までの、ボウリングの球のイメージ、いかがでした?
まずは、荷重移動の少ない、高速道路でのトレーニングから始めれば、きっと荷重で曲がる凄さに
あなたもきっと出会えるはずです。

さて、今回は、今まで話してきた荷重を利用して、実際にレーシングカーでは、どのように車をセットアップしているかを
お話したいと思います。

ご存知な方もいらっしゃるとは思いますが、GTカーには、データロガーというありがたく、悲しい機械がついています。
これは走行中に起こる得る、いろいろな情報を時間軸で記憶するという、とっても優れものです。
データロガーは、大きく分けて2つのグループに分かれ、1つ目はエンジン情報をメインに記憶するDPU(トヨタ系のデータ
ロガーです)。何を記憶するかというと、スピード、エンジン回転、水温、油温、吸気温度、ブーストはもちろん、燃料の
噴射量、噴射タイミング、点火時期、タービン回転数などなど合計100チャンネルぐらいの情報を走っているあいだ、
ず〜っと記憶しております。
で、何が悲しいかって、昔は、○○コーナーはアクセル全開なのに速くない!なんて言えたのに、このデータロガーが
出てきてからは、“田中さん、アクセル戻ってますよ!”というように、アクセル開度に至るまでバッチリ分かるという
訳です。そして、もうひとつがシャシーの情報を記憶するPI(ピーアイ)です。
チャンネル的には、4輪各々の荷重、ダンパーのストローク量、ヨコG、車高(地面までの距離)、ステアリングの切り角、
ギアポジション、4輪各々のブレーキ圧力などなど、これも合計100チャンネルぐらい設定が可能となります。

この中で、シャシーセットアップの基本となるのは、4輪各々の荷重となります。もちろん、荷重以外にも色々な要素を
使ってセッティングしますが、今回は荷重に限定してセッティングする場合の話とします。

では、筑波2000の最終コーナーで荷重を使ってセッティングすることにしましょう。

バックストレートを全開で走っているときの荷重バランスは、左右均等で、前後では若干リア荷重になっているはずです。
このとき、4輪の荷重を合計すれば、車の重量+ダウンフォース量ということになり、各々のスピード域で、このクルマに
どれだけのダウンフォースがかかっているかがデータとして分かるという訳です。(ナイショのナイショですが、GT500の
クルマなら、ここで1トン以上のダウンフォースがあると思います。

それからブレーキをかけると、一気にフロントに荷重が移り、リアの荷重が抜けます。もしこのときにオーバーステアが
出る場合は、明らかにリア荷重がデータ的に軽くなっているという訳です。反対に、リアに荷重が残りすぎていると、
その先で必ずアンダーステアになるはずです。

そして、ステアリングを右に切り始めると、フロント左右均等にかかっていた荷重は、少しずつ左に移ります。(まさに、
ボウリングの球が前壁の真ん中から左へ動いた瞬間です)これから先は、フロントの荷重合計と、リアの荷重合計の
バランスで、アンダーステア/オーバーステアが決まるのです。
コーナーリング中に、フロントの荷重が足りない場合は、アンダーステアとなり、反対に多すぎるとオーバーステアになるという訳です。なので、ここでの荷重を適正になるように、車高やサスペンションをセッティングしていくと、“あら不思議!”
バッチリと曲がる車になるという仕組みです。 もちろん、荷重でセッティングする前に、ドライバーが正しい荷重の
コントロールをしていることが絶対条件となり、もし、間違えた運転をしていれば、セッティングがうまくいきません。

それほどまで、荷重というのはクルマのバランスに直結しており、ドライバーが正しい運転をしていれば、クルマ側で
荷重を変化させ、バランスをとることができるのです。

次回は、データを解析するエンジニアの話です。

次回は、3月25日のアップ予定です。
<<<Vol.15 ▲TOP▲ Vol.17>>> 
※本サイト記載の価格は全て税込み価格となっております。ご了承ください。

Copyright(C) 2004 MINORU International. All Rights Reserved.