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第17回 「荷重編D」 <レーシングカーの荷重によるセットアップ その2> <2005年04月05日>

みなさんこんにちは。
スーパーGT第1戦でアップが遅れてすいません。
結果の方は、予選では“オヤジパワー炸裂!”により2番手を確保したものの、レースでの結果は、4位フィニッシュ・・・・。
勝てる流れがありながら、勝ちを引き寄せることができず、ちょっとガックリです・・・・・。でも、今年はルール改正もあり、
我々ターボ勢にとっては有利に働いていますので、なんとしても、シリーズ争いに絡んだ展開にしたいと思っています。
ハイ。

今年の相棒は、元F1ドライバー中嶋悟先輩の長男、中嶋一貴君です。 私が、お手伝いしているFTRS(フォーミュラー
トヨタ レーシングスクール)の卒業生で、かなり将来を期待されている若者(オッサン臭い言い方?)です。
彼の年齢は、なんと20歳!(ハタチッス!!)最多年齢差コンビという、あまり嬉しくない呼び名を付けられ、少々、
落ち込み気味の今日この頃なのであります・・・(悪かったな、年寄りで・・・・。俺にだって、20歳の時があったんだ・・・・。)

さて、前回のその1で、なんとな〜く、レーシングカーがどのように荷重を使ってセットアップするか、
理解してもらえましたか?

今回は、データを解析するエンジニアの話です。

どのチームにも、データを解析するエンジニアが必ずいます。(中には、解析だけでなくて、
シャシエンジニアとの兼任であったりします。)
走行後の、膨大なデータの中から、クルマをセットアップするのに必要とされるデータを取り出し、事前テストや
セッティング変更前のデータと重ね合わせ、クルマが早くなったかどうかの総合的な判断をする人たちです。
他にも、ドライバーでも気づかない、トラブルの前兆や不都合を事前に発見したり、タイヤの評価の裏付けデータ
として活躍し、今やこのデータ解析エンジニアの優劣で、リザルトが決まると言っても過言ではない時代なのです。

トヨタ系の各チームにも、たくさん優秀な解析エンジニアがいます。
その中でも、今回は、一風変わっている??PI(ピーアイ)の申し子、“高田王子”の話をしましょう。
(PI については前回を参照してください)

なんで、“王子”なのかと言うと、この人ファッションセンスが凄いのなんの。
まずは、長身であることを強調する、定番のベルボトムのパンツ。それもハンパじゃないぐらいのベルボトム。
私は、こんなの西条秀樹、以来見たこと無いほどです。
それに皮製でとっても丈が詰まっているベスト&見たこともない、とんがった革靴、等々。まさに“王子様”なのです。

私は、セリカの開発の時にお世話なったのですが、“高田王子”はファッションも凄いけれど、仕事も凄いのです。
走行後の会話なんて、まさにこんな感じです。

 高田王子 「クルマは今、こんな風に動いてますよね?」
 
 田中    「は、はい・・・・・・(まだ、何も言ってないって・・・・・)」

 高田王子 「○○コーナーでは、リアの安定感が足りないと思いますので、ちょっとダウンフォースを下面で
         いじってみます。」

 田中    「そ、そうなの?・・・・・」

 高田王子 「あと、ジオメトリーで同じスプリングですが、ストロークも少なくしておきますから。」

 田中    「え、そんなことできんの?・・・・・」

てな具合に、ドライバーがあれこれ言う前に、どんどんクルマがセットアップされていくのです。
で、乗ってみるとあら不思議・・・・・・。“高田王子”の言ったとおりにクルマは進化しているのです。
これって魔法??、なんか、オレだまされてない???という、不思議な気持ちになれるのです。


これほどまで、データ解析が進化した背景は、荷重や、ダンパーストロークの増減に時間軸を加えたことが
ポイントになっていると、田中は考えます。
一昔前のセットアップでは、荷重が多いとか少ないとか、または、サスペンションが硬いとか柔らかいは、
すべてある状況(ある場所)で時間をストップさせて、そこでの状況を輪切りにしてドライバーは、説明していました。
クリッピングポイントで、左フロントの荷重が不足しているとか、コーナーの入り口でハンドルを切った時に、
ロールが大きすぎるなどがそれにあたります。

しかし、現在はデータロガーにより、4輪別々の荷重変化を時間軸により把握し、マシンをセットアップします。
時間軸によりセットアップする最大のメリットは、最大荷重の量だけではなく、“いつ最大荷重にするか”、
“どのタイミングで最大荷重にするか”、“どのタイミングで最大荷重にするか”を決めることができることです。

たとえば、右コーナーのヘアピンを曲がる時の、左フロントの荷重を例にすると、ブレーキング&ハンドル操作で、
どんどん左フロントの荷重が増えていくわけですが、コーナーのどの部分で荷重が最大になっているかが、
時間軸のあるデータロガーなら、明確にわかります。もし、コーナーのクリッピングポイント近辺でアンダーステアが
出ているのであれば、荷重がコーナーのもっと奥で最大になるように、セッテイングを変更すればよいのです。

このあたりの話になると、ドライバーのコメントより、エンジニアのデータ解析力がセットアップのカギを握ります。
おまけに、チーム内には過去のデータがバッチリ残っていますので、新しいセッテイングやタイヤを試した場合など、
それが良いのか悪いのか、ハッキリと答えが出るのです。

やっぱ、データロガーって、スゴイ!


次回は、“レーシングあきんど”のコーナーです。

次回は、4月28日のアップ予定です。
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