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第23回 「荷重 番外編」<左足ブレーキ@> <2005年08月24日>
ちょっと、時間がたってしまいましたが、スーパーGT第4戦SUGOで優勝しました。
MR-Sの特性や、ミシュランタイヤとコースのマッチングから、優勝できるとすればこのSUGOだと、
シーズン前から狙っていただけに、ホント嬉しい優勝でした。
ターボー勢に厳しいレギュレーションとの兼ね合いで、ストレートスピードにビハインドがあるMR-Sですが、
強力なダウンフォースを武器に(じつは、かなりの空力マシンなんですよ!)戦略どおりの展開となり、
ピットも抜群に速く、まさに快勝でした。
たくさんの方々に、“良かったな!“ ”おめでとう”っていっていただき、本当に嬉しい限りです。
(田中のドラテクは間違っていないこと、証明できたでしょう?)
これで、ランキングも2位(トップと3ポイント差!)に浮上しましたので、この勢いで、後半戦も頑張ろ〜っと。


さてさて、ドラテクの方ですが、今回は荷重番外編として、左足ブレーキのお話をしましょう。

よく、雑誌とかテレビで、レーシングドライバーは左足でブレーキを踏むと言う話がありますよね?
いったい何のために? どんなメリットがあるの? って疑問に思ったことありませんか?
今回は、この真相をバッチリ話しちゃいます。

まず、レーシングカーに限定した話をすると、今、GTカーが使っているミッションは、ご存知のようにシーケンシャルと
呼ばれる、前後の移動だけでギアが変わるシステムです。
そして、このミッションの登場以来、左足でブレーキを踏むドライバーがどんどん増えてきたのです。

通常のHパターンのシフトでは、シフトダウンを伴うブレーキングでは、クラッチを切らなければならないので、
左足でブレーキを踏むことは不可能です。しかし、このシーケンシャルミッションなら、クラッチを切らなくても
シフトダウンが可能(ちょっとしたコツは要りますが)になりましたので、左足でブレーキを踏むドライバーが
増えてきたのです。

で、左足でブレーキを踏む最大のメリットは、何と言っても前後方向に対しての荷重移動のスピードが
よりコンロールできるようになることなのです。

カンタンに話をしましょう。
荷重編でも話をしましたが、クルマはブレーキを踏むと荷重は前へ、そして、アクセルを踏むと荷重は後ろへ
移動しますよね。この時の移動スピードは、ブレーキや、アクセルを踏む強さで変わってくるのはわかりますよね?
たとえば、富士スピードウェイの1コーナーでフルブレーキをするとしましょう。

通常の右足ブレーキの場合、ストレートではもちろんアクセル全開。それから、アクセルを抜き、フルブレーキングすると、ストレートではリアよりにあった荷重は一気にフロントへ移動します。この荷重移動のスピードがあまりにも速いと、
リアの荷重が急激になくなりバランスが崩れてしまいます。

しかし、左足ブレーキだと、まず、アクセル全開の状態から、ブレーキングを開始できます。
アクセルとブレーキをオーバーラップすることが可能になるのです。もちろん、右足ブレーキのように、“踏みかえる”
といった作業も必要ありませんので、時間的なロスもなくなります。
そして、フロントへ移る荷重移動のスピードもコントロールできる訳なのです。
当然、アクセルが全閉になってからは、コントロールはできませんが、急激な荷重移動が避けられ、
バランスが崩れにくくなるのです。

また、左足ブレーキはコーナリングにも影響します。
もし、減速の後半部分でハンドルを切り込んでいく時に、オーバーステアになった場合でも、左足ブレーキなら、
ブレーキ踏力はそのままにして、空いている右足で一瞬、アクセルを“アオル”と、あら不思議!オーバーステアは
ピタリと治まるのです。
これは、フロントに荷重が集まりすぎたことにより、リアの荷重が少なくなりすぎてオーバーステアになっている
訳ですから、そこで、一瞬、アクセルを“アオル”とリアに荷重が戻り、グリップが上がりオーバーステアが治まる
という訳なのです。
なかなか、便利でしょう、左足ブレーキングって。

これらのメリットは、セッティングの方向性にも影響します。
一言でいうと、ズバリ!「セッティングをもっとクルマが曲がる方向に振れるのです」。
じつは、このことが一番タイムに影響します。
基本的に、クルマをセットアップする時に、オーバーステアの方向には振りません。ニュートラルに近い、弱アンダーな
状態にセットアップします。よって、コーナーによっては、アンダーが多少強くなってしまうところがあります。
しかし、この状態から、もう少し曲がるようにセットアップすると、アンダーが出ているコーナーではコーナリングスピードが上がりますはが、コーナーによっては、オーバーステアになってしまうところが出てきてしまいます。
右足ブレーキなら、オーバーステアが出るまでクルマが曲がるようにセットアップしませんが、左足ブレーキなら、
この、オーバーステアの出るコーナーには、アクセルを“アオル”ことで対応できますので、より曲がる方向
(オーバーステア方向)にセットアップできるのです。

奥が深いでしょう? 左足ブレーキって。
でも、すべて荷重移動を有効に使うための究極のテクニックなのです。それぐらい荷重移動がクルマの運転に
与える影響が大きいということなんですよ。


さて、次回からは、左足ブレーキをみなさんにも使ってもらえるように、ストリート&走行会での、
左足ブレーキ使用方法をお話します。

次回は、9月16日のアップ予定です。
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