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                  | 第30回 | 「タテとヨコグリップの法則」<特別編> | <2006年2月15日> | 
              
                  | 〜パニックブレーキからの脱出〜 |  |  | 
              
                  | こんにちは。 スーパーGTシリーズも、あと1ヶ月で開幕というのに、まだテストも始まらず、シーズンオフ気分、真っ只中の田中です。
 今年は、MR-Sにもいよいよ、レクサスのV6 NAが搭載されます。今までは、ターボに厳しいレギュレーションの中、時にはストレートスピードが20Km/hも違う!!てなこともありましたが、これで、今年からは、MR-S最大のウイークポイントだったストレートスピードも、トップレベルになる予定です。
 このレクサスV6(IS350のエンジンね)を積むために、現在、車両側に大幅改造中で、メカニックさんたちは不眠不休で頑張っているのです。
 
 |  レクサスエンジンに
 早く乗ってみたい!
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                  | さてさて、今回は、パニック状態からの脱出の話です。 
 パニックにも、いろいろな種類がありますが、中でも“タチ“が悪いのは、やっぱブレーキングでのパニックでしょう。緊迫感と恐怖心で、誰だって固まりやすいハズです。
 
 では、実際の走行をイメージしながら読んでください。
 
 たとえば、雨のサーキット走行で、ストレートエンドに減速を伴うコーナーがあったとしましょう。そこに、ブレーキを詰めて、勢い良く飛び込んだら・・・・・・“パキン”と、ブレーキがロックしてしまいました。
 
 さて、あなたはどう対処しますか?
 
 そんなの、「ブレーキ踏力をコントロールして、ロックを解除するに決まってる!」って、考えた“あ・な・た・!” 本当に、この場面で、平常心でコントロールできますか??
 私の感覚では、約50%の人は、見事に? そのまま、タイヤバリヤに一直線となるはずです。それも、真正面から激突しますので、クルマも人間もかなりのダメージとなります。
 
 誰だって、タイヤがロックしたらブレーキ踏力を弱めて、ロックを解除することは、頭の中ではわかってますよね?? でも、それが実践できなくなってしまうのがパニック状態の恐ろしさなのです。
 
 この、パニック状態に陥ってしまうと、スピードが落ちない恐怖と、ハンドルが効かない恐怖から、ブレーキ踏力が一切、緩まないようになるばかりか、ペダルが壊れるぐらいの力で、ブレーキを踏み続けてしまいます。要するに、自分のイメージと違うことが突然起こり、頭の中で、「冷静にブレーキ踏力をコントロールせよ!」といった、指令が出なくなってしまう状態です。当然、タイヤのタテとヨコ グリップの関係から考えても、ブレーキが緩まないと、タイヤへの要求グリップが大きすぎるということになります。
 
 パニックになる状況は、理解できました??
 
 で、ここから、どのようにしてパニックを回避するかですね。
 
 方法は、いたってカンタン。
 ロックした瞬間、視線を正面から、コーナーのイン側に移すのです。ただそれだけです。
 視線を移すと、いったい何が変わるのでしょうか?
 下の図を見てください。視線をAからBに変えると、見えるものまでの距離が変わります。この距離感が重要なのです。
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                  | なぜかというと、ブレーキが緩まないのは、頭の中がパニックになるからだといいましたよね。要するに、頭の中のパニックを取り除くしか、ブレーキを緩める方法はないのです。 
 この場合、視線を変えることにより、見えるものまでの距離が長くなります。たとえば、Aの視線だと、タイヤバリヤまで50メートルしか距離がない場合でも、B に変えると、タイヤバリヤまで100メートルに距離が長くなります。Aを見ているときは、“もうだめだ、この距離では止まりきれない”といった心境から、視点をB に変えると、“これなら止まれるかもしれない”と、少しですが心に余裕が生まれます。そして、この余裕が、頭の中のパニックを解消し、冷静にブレーキを緩めることを可能とするのです。
 ブレーキさえ緩めば、ハンドルが効き、視線だけではなく、実際の減速距離も長くなり、何とか“セーフ”となる訳なのです。
 
 また、もうひとつのスペシャルテクニックは、ブレーキを踏んでいる足の指を左右に開く方法です。止まっているクルマで、やってみればわかるのですか、力いっぱいブレーキを踏んでいる状況で、“スッ”と足の指を開くと、あら不思議!!足に力が入らなくなってしまうのです。これを習慣付けて、突然ブレーキがロックしても、ブレーキを緩めるきっかけにしてしまうのです。少しでも、ブレーキが緩むと、フロントタイヤのグリップが戻り、何とかパニック状態から脱出できるハズです。
 
 もちろん、このテクニックは、クリッピングポイント手前のブレーキが強くて、アンダーステアになってしまう場合にも有効です。
 
 私は、今まで多くの、ブレーキパニックをこれらの方法で、回避してきました。
 みなさんも、“いざ”というときのために、よ〜く覚えておいてくださいね。
 
 これらのテクニックは、できると、できないで、かなり大きな差になりますよ!!
 
 
 次回は、レーシーな人々PartB をお届けします。
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                | 次回は、3月10日のアップ予定です。 |